マッチメーカー目次へ戻ります【第5話】鋼鉄の巨人、アーマード・ナイト登場−2

グゥーン…

 三人を乗せたエレベーターは、静かな機械音を発しながら、一路地下へと向かう。エレ
ベーターの中では、誰として口をきく者はいなかった。

グゥーンン…プシュー…

 どのくらい地下へ降りたのであろうか、やがて静かにエレベーターが止まると、小さな
音を立てて扉が開いた。降りると、そこにも厳重なセキュリティ・システムがあり、乗る
時と同様に、様々なチェックをサムスが黙々とこなす。すると、前の扉の柱に設置されて
いる小型モニターに、誰かの顔が映し出された。
「…コードを確認しました。…あ、これはこれはサムス様。ご苦労様です」
「ご苦労。今、アーマード・ナイトのパイロットと、オーナーをお連れした。ロックを解
除してくれ」
「は!ただ今解除致します」
 サムスの部下であろう、やたらとぺこぺしながら応対していたが、やがてカチッ、とい
う音がして、扉が開いた。
「さ、こっちだ」
 サムスに案内されるままに中へ入っていくと、微かにいろいろな音が耳に飛び込んでく
る。人々の話す声、コンピューター音、機械の作動音等々…
 長いとも思える通路を歩いていくと、目の前に物々しい武装を施した扉が現れた。扉の
上下左右には、レーザー発射装置が備えられ、いつでも発射できるように不審者を狙って
いる。また、扉の両脇には、武装した軍の兵士が睨みをきかしていた。
 サムスが目で合図をすると、兵士はさっと道を開け、扉を解放した。その途端、開かれ
た扉の向こうから、耳をつんざくような騒音が飛び込んできた。金属のぶつかり合う音、
溶接する音、物が落下する音、人々の大声でわめく声、等々…さながら、工事現場に足を
踏み入れてしまったような感じだ。三人は、そんな中を更に奥へと進んでいく。トミーは
歩きながら回りを見ていると、何やら腕のような物や、足の形をした物が、徐々に出来上
がって行くのが確認できた。
(…これが、アーマード・ナイトの物なのか…?)
 トミーはあれこれと考えていたが、今いるフロアーのいちばん奥に、これまた武装扉と
兵士が確認できた。今度もIDカードとパスワード、DNAロックにアイ・ロックまでし
なければならないときている。
(…なんて厳重なんだ…サムスの見せたい物って…一体…)
 やがてチェックを通過すると、扉の奥には鉄骨むき出しのエレベーターがあった。20
世紀頃の、高層ビルの建設現場にあるような、涼しげなエレベーターを想像してもらえれ
ばいいだろう。
 エレベーターは更に地下へと降りる。次第に騒音が遠ざかり、静寂が辺りを支配した。
聞こえるのは、エレベーターの機械音だけだ。
 どのくらい降りたのだろうか、ガタガタと音を立てながらエレベーターが止まると、そ
こには薄暗い空間が広がっていた。三人はエレベーターから無言で降りると、サムスが壁
にあるスイッチを操作する。

カチッ…

 物音ひとつ無い空間に、スイッチの乾いた音が響く。すると、数少ないランプが空間を
照らす。三人は揃って目を凝らした。ほのかに明るくなった空間に、何やら大きな塊がう
ずくまっている。目が慣れてくるにつれ、それが何かがはっきりと分かってくる。全体が
黒く焦げ付いたように風化し、かなりの高熱のためか、泡立つように溶けたようになって
全体こそよく分からないが、大きな手の形をした物や足のような物がそこにあった。
「…こ、これは…」
「ねぇ、なに?これ…」
 トミーとミケは、やっとの事で声を出すと誰ともなしに聞いた。
「…これが…これが約一世紀程前、アトランティス大陸から発見された鋼鉄の巨人、『アー
マード・ナイト』のオリジナルだ」
『…!…』
二人は同時に顔を見合わせると同時に、サムスの方へ振り向く。
「…アーマード・ナイトの…オリジナルだって…!?」
「…そうだ」
「なぜこんな所に…」
「それはもちろん、軍の管理下に入ったからに他ならない」
 トミーは、サムスの言葉に信じられないという顔で、
「…一体、どんなアーマード・ナイトを創ろうってんだ…サムス」
 サムスは、二人の方へ向き直ると、意を決して話し出した。
「ミケはもちろんの事、トミー、君にも協力してもらう」
「な、何だって!?それはどういう事だ」
 トミーは、あまりの事に我が耳を疑った。
「…トミーを巻き込んでしまって、本当に申し訳ないと思っている。半年前のあの暴動鎮
圧後、軍の連中が来た事はさっきも話したが、その時にミケの存在を知られてしまったん
だ。奴ら、アーマード・ナイトとミケを結び付けた戦闘マシンを…」
 サムスはそこまで話すと、ミケがいる事を思い出して、ふと言葉を閉ざす。
←戻る 次へ→
inserted by FC2 system